はじめに
「技術・人文知識・国際業務」ビザをもって、日本国内企業でシステムエンジニアとして働いている外国人が同業他社へ転職する
上記のような具体的事例の場合、主に何を検討すべきなのでしょうか。外国人が日本国内で転職する際の入管法上のポイントや手続きについて解説します。申請する外国人本人が注意すべきものですが、転職に際して受け入れ先にとっても役立つ知識ですので、企業等の人事担当者や小規模事業主様もぜひともご承知おきください。
日本国内で転職する際の入管法上のポイント
在留資格該当性
就労ビザ(=就労を行うことが可能な在留資格)にはいくつも種類があり、就労ビザごとに行うことができる活動内容が決まっています。よくある例として、「技術・人文知識・国際業務」ビザを持つ外国人が転職する場合、転職先での業務内容が「技術・人文知識・国際業務」ビザが定める活動内容の範囲外である場合、就労ビザの変更(在留資格の変更)を検討しなければなりません。
転職後の活動が就労ビザの活動内容に適合しているのか、在留資格該当性に不安がある場合はあらかじめ就労資格証明書交付申請を行うことをおすすめします。
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上陸許可基準(基準省令)適合性
転職を行う場合、必要に応じて在留資格変更手続きや在留期間更新手続きを行います。これら申請手続きでは上記の在留資格該当性に加え、様々な要件、すなわち上陸許可基準(基準省令)を押さえておかねばなりません。業務内容、学歴要件や実務要件がこれにあたります。
在留資格該当性と同様、上陸許可基準適合性(本当に申請要件を満たしているのか)に不安がある場合はあらかじめ就労資格証明書交付申請を行うことをおすすめします。
在留資格の残余期間
入管法上の手続きの選択肢を確認するため、現在の就労ビザの在留期間を確認します。「技術・人文知識・国際業務」ビザであれば、在留の残余期間が3ヵ月を切っているのであれば、速やかに在留期間更新手続きをする必要があります。
入管法上の手続き
在留資格変更手続き
転職によって業務内容が変わり、「技術・人文知識・国際業務」ビザが定める活動範囲外の業務を行う場合、在留資格変更手続きをしなければなりません。ここで、「技術・人文知識・国際業務」ビザと類似している「企業内転勤」ビザと「高度専門職1号ロ」ビザについて補足しておきます。
「企業内転勤」ビザでは、申請の際に許可された転勤場所での活動が想定されています。また、「高度専門職1号ロ」ビザでは法務大臣が指定する特定の事業所での活動が想定されています。したがって、これらの就労ビザをもつ外国人が日本国内で転職するためには、原則、在留資格変更手続きが必須です。
在留期間更新手続き
転職後の活動が「技術・人文知識・国際業務」ビザの在留資格該当性に問題なく、学歴・実務経験等の上陸許可基準(基準省令)適合性も満たしているのであれば、手続きをせずに転職が可能です。
この場合、転職後に在留期間の期日を迎えることが多く、更新手続きを行う必要があります。更新手続きでは転職後の活動内容について審査されますので、当然ですが転職がない場合の更新手続きと比べると必要書類も多くなりますし、審査期間も長くなります。更新手続きでは、申請人(外国人転職者)の認識や立証が不十分であると更新が不許可となることもあり、在留期間満了日をもって就労活動ができなくなります。
就労ビザの変更が結果的に不要であったとしても、転職によって業務内容や必要な専門知識が変わったり、転職後に単純労働業務の比率が著しく増えたりする場合、とりわけ慎重に在留資格該当性や上陸許可基準適合性を検討してください。
やはり、在留期間更新手続きにおいても不許可のリスクを軽減するため、就労資格証明書を取得しておく方が望ましいでしょう。
就労資格証明書
すでに何度か出ていますが、就労資格証明書とは就労ビザ(就労を行うことができる在留資格)を持つ外国人が転職をした場合等において、具体的活動内容が持っている就労ビザに対応する活動に含まれるのかどうかについて、入管に事前に判断してもらうための書類です。入管は外国人から交付申請があった場合、以下の2点を審査します。
- 申請の活動が現に有している就労ビザが定める活動内容に該当するかどうかの審査
- 申請のあった活動が上陸許可基準(基準省令)への適合性が必要である場合、その適合性の審査
就労資格証明書の交付を受けたからと言って必ずしも在留資格変更許可や在留期間更新許可が保証されるわけではないですが、外国人側の独自判断では見解に相違が生じやすい在留資格該当性や上陸許可基準(基準省令)適合性について事前審査を受けらえれるメリットがあるので、不安が少しでもあれば就労資格証明書の申請をおすすめします。
外国人転職者が行う届出
「技術・人文知識・国際業務」ビザで働く外国人は、契約の相手側(企業・会社)との契約が終了したり、新たに契約を結びなおしたりした場合、14日以内に入管に届出をしなければなりません。
つまり、転職した場合は必ず届出が必要です。
受け入れ企業等が行う届出(努力義務)
「技術・人文知識・国際業務」ビザで働く外国人を受け入れている企業等は、入管に外国人就労者の受け入れ開始等について届出をするように努めなければならなりません。
まとめ
外国人が日本国内で転職する際の入管法上のポイントや手続きについて、もっともよくある「技術・人文知識・国際業務」ビザで働く外国人の転職を例にとって解説しました。就労ビザの変更や更新では在留資格該当性や陸許可基準(基準省令)への適合性について慎重に検討し、必要に応じて就労資格証明書の申請を考慮してください。
ご不明な点がございましたら、お気軽に当事務所へご相談ください。静岡県、愛知県を中心に全国47都道府県のお手続きに対応可能です。
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―記事を書いたのは私です―
行政書士あくろ事務所 代表
川戸 勇士
東大大学院博士課程修了/行政書士・薬剤師・博士(薬学)
薬・医療・国際化をキーワードとする許認可手続きを業務の柱として、すべての人が健康で豊かな暮らしを実現できる社会を目指しています。
レモンサワー・とり天・うなぎが大好物。
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