はじめに
取得すべき在留資格(就労ビザ)を検討するにあたって、これから日本国内で行おうとする就労活動の内容と就労ビザごとに定められている活動内容を比較し、適切な就労ビザを決定しなければなりません。しかしながら、就労ビザの活動内容には簡単に判断できないものも多く、何を優先すべきかわからない場合もあります。
ここでは、具体的事例として「電子機器メーカーの技術職の正社員として日本法人に採用され、日本国内で勤務することになった外国人」を設定し、就労ビザを決定するにあたってどのような事項を検討すべきか、「技術・人文知識・国際業務」「経営・管理」「企業内転勤」「高度専門職」を想定して解説します。
「技術・人文知識・国際業務」
技術・人文知識・国際業務ビザをもって在留する外国人として想定される職種、中でも理系職である「技術カテゴリー」で就労可能な職種としては下記が代表的なものです。
- システムエンジニア
- プログラマー
- 技術者
- 情報システム担当者
- データベースエンジニア
個々の状況によりますが、日本国内で雇用主が交付する労働条件通知書等で記載されている従事すべき業務に関する事項、採用活動で使用した募集要項等から上記職種に該当するか判断します。電子機器メーカーの技術職の仕事については、技術・人文知識・国際業務ビザの活動内容に該当する可能性が高いと考えられます。
技術・人文知識・国際業務ビザの概要については、下記を参照してください。
技術・人文知識・国際業務ビザとは 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格、一般的には技術・人文知識・国際業務ビザと呼ばれ、日本で専門的な知識・技術または外国人特有の感性を必要とする業務に従事する場合に取得を検討する在留資格・就労ビザ[…]
「経営・管理」
経営管理ビザを簡単に説明すると、日本で貿易その他の事業等の「経営」をしたり、企業の幹部として事業等の「管理」をしたりするための在留資格です。要するに外国人が経営者になるための就労ビザと考えて差し支えありません。
電子機器メーカーの技術職の仕事についても、業務内容に経営活動や管理活動が含まれる場合には経営・管理ビザが必要になる可能性があります。業務内容や会社の規模、組織構造、部下の人数等、各々の企業の事情を踏まえた上で判断しなければなりません。
逆に言えば、電子機器メーカーの技術職の仕事について、企業の経営活動や管理活動が含まれない場合には、経営・管理ビザには該当しません。
経営・管理ビザの概要については、下記を参照してください。
はじめに ー経営・管理ビザとはー 「経営管理」ビザとは、外国人が日本で会社を設立して経営したり、幹部として管理の仕事をしたりするための在留資格です。 まず、「経営」では事業の運営に関する重要事項の決定や業務の執行、または監査の[…]
「企業内転勤」
企業内転勤ビザで行うことができる活動は、技術・人文知識・国際業務ビザに基づいて行うことができる活動です。理系業種で言うと、活動内容が上記のシステムエンジニア、プログラマー、技術者、情報システム担当者、データベースエンジニア等の職種に該当する場合、企業内転勤ビザを取得できる可能性が考えられます。
「企業内転勤ビザ ≒ 技術・人文知識・国際業務ビザ」という認識は正しいですが、企業内ビザを取得するためには、その名の通り企業内転勤の形態で日本ある事業所に転勤した外国人が当該事業所で行う活動でなければなりません。また、企業内転勤ビザの場合、転勤前に外国事業所で1年以上の実務経験が求めら、一定の転勤期間を定めること、および転勤した当該事業所で活動を行うという条件が定められています。技術・人文知識・国際業務ビザとの一番の違いは「学歴要件」がないことです。
電子機器メーカーの技術職の正社員として日本法人に採用され、日本国内で勤務することになった外国人に関しては、経営・管理に該当しそうな業務が含まれない場合、基本的には技術・人文知識・国際業務ビザの取得を考えます。ただし、検討時点において外国にある親会社や関連会社等で1年以上の勤務実績がある場合には企業内転勤ビザが取得できる可能性があります。
少し注意することは、転勤とは外国から日本国内の事業所への異動を意味するので、別の在留資格・就労ビザをもって日本国内で働いていた場合に、日本国内の別事業所へ転勤する場合などは企業内転勤ビザの対象外です。
企業内転勤ビザの概要については、下記を参照してください。
はじめに 「企業内転勤」ビザとは、海外にある本社から日本の支店に転勤してくる外国人が対象となる就労ビザです。企業内転勤は新たな外国人を雇用する場合と比較し、適切な自社の社員を確実に呼び寄せることができるメリットがあります。 転[…]
「高度専門職」
高度専門職ビザは、特に日本の経済成長やイノベーションへの貢献が期待される能力や資質に優れた人材(高度外国人材)に認められる在留資格です。高度専門職ビザには活動内容に応じていくつかカテゴリーがあります。
高度専門職1号ロで行うことができる活動内容は、「法務大臣が指定する日本の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学または人文科学の分野に属する知識または技術を要する業務に従事する活動」または「当該活動とあわせて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動」であり、イメージとして「高度専門職1号ロ ≒ 技術・人文知識・国際業務ビザ」です。ただし、高度専門職1号ロの場合、技術・人文知識・国際業務ビザにおける「国際業務カテゴリー」に相当する活動は含まれていません。また、法務大臣が指定する機関という条件が加えられており、この点で技術・人文知識・国際業務ビザと異なります。
電子機器メーカーの技術職の正社員として日本法人に採用され、日本国内で勤務することになった外国人に関しては、学歴・職歴・年収・研究業績等次第では高度専門職1号ロ ビザが取得できる可能性があります。
高度専門職ビザの概要については、下記を参照してください。
はじめに 「高度専門職」ビザとは、特に日本の経済成長やイノベーションへの貢献が期待される能力や資質に優れた人材(高度外国人材)を対象とする在留資格です。「高度専門職」ビザで認められる活動はいくつかカテゴリーがあり、それぞれ「高度専門[…]
まとめ
取得すべきビザを検討する場合、これから日本で行おうとする就労活動の内容と就労ビザごと定める活動内容とを比較検討し、適切なビザを選択する必要があります。今回例として設定した電子機器メーカーの技術職の正社員が取得を検討するビザとしては、技術・人文知識・国際業務ビザ以外にも、
・業務内容に企業の経営活動や管理活動が含まれる場合には「経営・管理」ビザに該当する可能性
・外国にある親会社や関連会社で1年以上勤務実績がある場合には「企業内転勤」ビザに該当する可能性
・学歴・職歴・年収・研究実績ごとに算定されるポイントによっては「高度専門職1号ロ」ビザに該当する可能性
などが考えられます。
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技術・人文知識・国際業務ビザとは 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格、一般的には技術・人文知識・国際業務ビザと呼ばれ、日本で専門的な知識・技術または外国人特有の感性を必要とする業務に従事する場合に取得を検討する在留資格・就労ビザ[…]
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―記事を書いたのは私です―
行政書士あくろ事務所 代表
川戸 勇士
東大大学院博士課程修了/行政書士・薬剤師・博士(薬学)
薬・医療・国際化をキーワードとする許認可手続きを業務の柱として、すべての人が健康で豊かな暮らしを実現できる社会を目指しています。
レモンサワー・とり天・うなぎが大好物。
静岡県、愛知県を中心に全国47都道府県で外国人サポート、入管業務代行、ビザ申請可能!
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