はじめに ー取得に必要な事業実態・規模ー
外国人が日本で会社を設立し、ビジネスを始めることを考えるとき、以下のような質問が想定されます。今回はこれらについて詳しく確認していきます。
- どのような場所が事業所として認められるのか
- 事業計画書が必要なのか
- 必要とされる従業員数や資本金額は
- 実務経験や報酬額について具体的には
事務所の存在と確保
経営・管理ビザ取得の要件として「事業を営むための事業所が日本に存在すること」が求められます。事務所を借りる場合、賃貸借契約において使用目的を事業目的であることを明確にし、契約者はその法人等の名義とします。
月単位の短期間賃貸スペース、屋台等の容易に処分可能な施設、昨今流行りの現実に場所が存在しない、いわゆるバーチャルオフィスは特別の事情がない限り事業所として認められません。
住居として借りている物件の一部を使用して事業を運営する場合、以下の条件が必要です。要するに客観的に住居内に事業所があることが見て取れなければなりません。
- 住居目的以外での使用を貸主が認めていること(借主と法人等との間の転貸借を貸主が認めていること)
- 借主が当該法人の事務所使用を認めていること
- 事業を行う設備等を備えた事業目的占有の部屋を有していること
- 物件に係る公共料金等の共用費用の支払いに関する取り決めが明確になっていること
- 看板類似の社会的標識を掲げていること
なお、経営アドバイスや企業運営に必要なビジネスサービス等への橋渡しを行う団体・組織(インキュベーター)の支援を受けている場合、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)が運営する対日投資・ビジネスサポートセンター(ISBC)の提供する起業支援を目的とした一時的オフィスであれば、申請人から当該事務所に係る使用承諾書等の提出があった場合、「事務所の存在・確保」ができているとして取り扱われます。
事業計画書の必要性
事業計画書と事業の継続性
「経営・管理」ビザの取得にあたって在留資格認定証明書交付申請を行う場合、所属機関の事業規模に応じて必要書類が異なってくることを以下で解説しました。
「経営・管理」の申請手続き 企業のカテゴリー分類とは 「経営・管理」ビザの申請においては、入管が申請書類の一部を省略しても差し支えないと認める場合があります。実務上、管理または経営に従事しようとする事業の規模に応じてカテゴリー[…]
所属機関がカテゴリー3や4の場合、提出書類として事業計画書が必要です。
事業計画書は、外国人が経営または管理する事業が安定的・継続的に営まれているかを客観的に立証するための重要書類となります。事業の安定性・継続性は単に資本金の額の大小だけではなく、営業活動により得られる売上高、利益、従業員数、営業種目、営業品目、営業損益の決算内容やその見込み、政府等からの資金援助の有無などから総合的に判断されます。
事業計画書には決まった書式がありませんが、上記の判断要素を念頭におきながらA4サイズで10ページ程度の書類を日本語で作成する必要があります。そのため、現実的に外国人が作成することは困難です。
事業の継続性と決算状況
事業の継続性に関して、今後の事業活動が確実に行われることが見込まれる必要があります。当然、赤字決算もありうることから、単年度の決算状況を重視するのではなく、貸借状況等も含めて総合的に判断されます。なお、債務超過が続く、特に2年以上連続赤字の場合、申請人本人の活動内容を含めて慎重な調査がなされます。
職員の数と資本金の額
事業規模の要件としては、以下が定められています。
- 経営または管理に従事する者以外に日本に居住する2人以上の常勤職員(※)が従事して営まれるものであること。
※外国籍の場合、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」「特別永住者」に限られます - 資本金の額または出資の総額が500万円以上であること。
- ①または②に準ずる規模であると認められること。
経営・管理ビザ申請で”500万円以上”という要件は割と知られているのですが、多くの場合において勘違いがあるので、しっかりと理解しておく必要があります。すなわち、資本金や出資金500万円以上について下記の認識はすべて間違いです。
- 資本金が500万円必要 間違い
- 申請人本人が500万円を出資する 間違い
- 申請人1人につき500万円を出資する 間違い
あくまで、一定の事業規模を示す方法の一つとして500万円の資本金または出資が挙げられているに過ぎず、これに準じる事業規模であれば問題ありません。それを示すのが③の要件ですので、どのような条件があれば①や②の要件に「準ずる」規模と認められるのか、確認していきます。
「2人以上の常勤職員が従事」に準じる規模
「経営・管理」を行う外国人以外に、日本に居住する常勤の職員が2名以上勤務していれば問題ありません。この常勤従業員には、他の就労ビザで在留する外国人は除かれてます。日本人の他、特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の就労が認められる一部の身分系在留資格をもっている外国人でなければなりません。
また、パートタイマーやアルバイトは該当しません。週5日以上で1週あたり所定労働時間が30時間以上である必要があります。
2人以上に準じるとは、たとえば常勤職員が1人のみであっても、もう1人を従事させるのに要する費用として250万円程度を想定し、これを事業に投下して営まれる事業規模であればよいことになります。
「資本金500万円以上」に準じる規模
外国人が個人事業として事業を開始する場合で500万円以上を投資して営まれる事業規模です。具体的には、事務所の確保、雇用する職員の給与、事業所の事務機器購入経費および事務所維持費にかかる経費が投下された金額にあたります。
また、外国人がすでに事業を開始している継続的事業の場合、500万円以上の投資が継続的に行われていることが必要です。
資本金は申請人以外が出資しても問題ありません。
実務経験と報酬額
経営業務に必要な実務経験
実務経験要件は「経営・管理」ビザでも「管理」業務に従事する場合のみに設定されています。「管理」業務に従事する場合、3年以上の実務経験が必要です。この実務経験には、実際に「経営・管理」にあたる業務に従事した期間に加えて、大学院で経営または管理に係る科目を専攻した期間を含むことができます。たとえば、MBA(経営学修士)を取得するために大学院に在籍していた期間を含めることができます。
報酬額
日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが必要です。
入管法において明確な基準はありませんが、実務上おおよそ月額18万円以上、可能な限り25万円以上の役員報酬が必要とされます。なお、詳細は省略しますが、将来的に永住ビザを取得することを考えると、月額25万円以上の役員報酬を設定することが必要です。
まとめ
「経営・管理」ビザの要件に関わる事業規模について簡単に解説しました。ビザ申請では制度の概要把握や必要書類の正確な理解が必要です。ご不安やご不明な点がございましたら、お気軽に当事務所へご相談ください。入管申請手続きの専門家である当事務所が責任をもって手続き完了までサポートいたします。
ご不明な点がございましたら、お気軽に当事務所へご相談ください。静岡県、愛知県を中心に全国47都道府県のお手続きに対応可能です。
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―記事を書いたのは私です―
行政書士あくろ事務所 代表
川戸 勇士
東大大学院博士課程修了/行政書士・薬剤師・博士(薬学)
薬・医療・国際化をキーワードとする許認可手続きを業務の柱として、すべての人が健康で豊かな暮らしを実現できる社会を目指しています。
レモンサワー・とり天・うなぎが大好物。
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