【薬事三役】 総括製造販売責任者・安全管理責任者・品質保証責任者
薬機法第17条において、医薬部外品や化粧品の製造販売業許可を取得する上で絶対に必要なこととして総括製造販売責任者の設置が規定されています。まずは総括製造販売責任者の要件をもう一度おさらいしましょう。医薬部外品と化粧品で要件がわずかに異なるので注意です(薬機法施行規則第85条の2 医薬品等総括製造販売責任者の基準)。
医薬部外品の総括製造販売責任者
- 薬剤師
- 旧大学令に基づく大学、旧専門学校令に基づく専門学校又は学校教育法に基づく大学若しくは高等専門学校で、薬学又は化学に関する専門の課程を修了した者
- 旧中等学校令に基づく中等学校、若しくは学校教育法に基づく高等学校、又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する専門の課程を修了した後、医薬品又は医薬部外品の品質管理又は製造販売後安全管理に関する業務に三年以上従事した者
- 厚生労働大臣が前3号に掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認めた者
化粧品の総括製造販売責任者
- 薬剤師
- 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する専門の課程を修了した者
- 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する科目を修得した後、医薬品、医薬部外品又は化粧品の品質管理又は製造販売後安全管理に関する業務に三年以上従事した者
- 厚生労働大臣が前三号に掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認めた者
医薬部外品の総括製造販売責任者の方が化粧品に比べてワンランク要件が厳しくなっています。例えば、各々2番のいわゆる学歴要件を比べてみると、医薬部外品が専門課程を修了した大卒者であるのに対して化粧品では高卒者でも可となっています(詳しくは医薬部外品の製造販売業②~許可要件~および化粧品製造販売業②~許可要件~をご参照ください)。
医薬部外品や化粧品の製造販売業許可を取得するためには、総括製造販売責任者の設置に加えて下記の要件をそれぞれ満たす安全管理責任者と品質保証責任者も設置する必要があり、総括製造販売責任者は安全管理責任者と品質保証責任者との相互の密接な連携を図ることが求められています(薬機法第17条第4講薬機法施行規則第87条第2項 医薬品等総括製造販売責任者の遵守事項)。
安全管理責任者
医薬部外品または化粧品の安全管理責任者は次に掲げる要件を満たすこと。
- 安全確保業務を適性かつ円滑に遂行しうる能力を有する者であること
- 医薬部外品または化粧品の販売に係る部門に属する者でないことその他安全確保業務の適性かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがない者であること
品質保証責任者
医薬部外品または化粧品の安全管理者は次に掲げる要件を満たすこと。
- 品質管理業務を適性かつ円滑に遂行しうる能力を有する者であること
- 医薬部外品または化粧品の販売に係る部門に属する者でないことその他品質管理業務の適性かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがない者であること
総括製造販売責任者の兼任パターン
製造販売業を適正かつ円滑に進めるためには薬事三役を設置してそれぞれの業務を専属的に実施させるのが理想です。一方、特に小規模事業者にとっては三役をそれぞれ雇用することが難しい状況もあります。そのような実務上のハードルを下げるため、相互の適切かつ迅速な連携が可能である状況を担保しつつ、その連携状況が外形的に確認できる場合、条件次第で総括製造販売責任者が安全管理責任者や品質保証責任者、あるいは製造業の責任技術者(詳しくは医薬部外品の製造業②~許可要件~および化粧品製造業②~許可要件~をご参照ください)を兼務することができます。
ここでは、医薬部外品と化粧品の製造販売や製造を同時に実施している典型的な事業スタイルを題材として、代表的な兼任可能パターンを確認してみましょう。
パターン① 同一所在地の医薬部外品製造販売業
業務に支障がない場合、同一所在地に勤務する総括製造販売責任者と安全管理責任者または総括製造販売責任者と品質保証責任者の兼務が可能。(⇒一人三役NG)
なお、あくまで総括製造販売責任者との兼務についてであり、安全管理責任者が品質保証責任者を兼務すること(あるいはその逆)は認められません。
パターン② 同一所在地の化粧品製造販売業
業務に支障がない場合、同一所在地に勤務する総括製造販売責任者は安全管理責任者と品質保証責任者の兼務が可能。(⇒一人三役OK)
なお、あくまで総括製造販売責任者との兼務についてであり、安全管理責任者が品質保証責任者を兼務すること(あるいはその逆)は認められません。すなわち、安全管理責任者と品質保証責任者が同一人物であるのは、総括製造販売責任者が三役すべてを兼務している場合に限ります。
パターン③ 同一所在地の異なる製造販売業
同一法人の同一所在地の異なる製造販売業間において、総括製造販売責任者同士、安全管理責任者同士、品質保証責任者同士の兼務が可能です。
なお、異なる責任者間の兼務については、最上位の許可の兼務範囲が適用されます。すなわち、一人の人物が医薬部外品製造販売業と化粧品製造販売業の総括製造販売者を兼務する場合、医薬部外品では安全管理責任者か品質保証責任者のどちらか一方しか兼務できないため、総括製造販売責任者の他に少なくとも一人を安全管理責任者か品質保証責任者として雇用する必要があります。
パターン④ 同一法人の製造販売業と製造業 品質保証責任者の事務所が製造業施設内
同一法人において製造販売業と製造業をあわせて行っている場合であって、品質保証責任者がその業務を行う事務所と同一施設内に製造所を有している場合には、品質保証責任者と責任技術者の兼務が可能です。要するに、工場の責任技術者は製造販売業の品質保証責任者になれますが、例えば工場のない東京本社の事務所を勤務地とすることは認められず、あくまで工場内で勤務する必要があります。
ちなみに、安全管理責任者との兼務については少し複雑です。医薬部外品では認められず、化粧品においても総括製造販売責任者が安全管理責任者を兼務している場合に限り、同一所在地において責任技術者と安全管理責任者を兼務できます(次のパターン⑤に該当する)。
パターン⑤ 同一所在地の製造販売業と製造業(一般) 異なる所在地の製造販売業と製造業(包装・保管等区分)
同一所在地に勤務していれば、医薬部外品または化粧品製造販売業者の総括製造販売責任者と製造業の責任技術者は兼務可能です。また、製造業でも自社製品の包装・表示・保管のみを行う場合においては、製造販売業と製造業の所在地が同一である必要はありません。なお、総括製造販売責任者と責任技術者を兼任できることは、総括製造販売責任者が一人四役を担うこともルール上可能であることになります。
おわりに
以上、医薬部外品と化粧品について、総括製造販売責任者の兼務の範囲について代表的パターンについて解説しました。総括製造販売責任者の設置は製造販売業許可申請において最も重要かつ必須の要件となります。個別的事例によってはもっともっと複雑なパターンも存在しますので、自社のパターンがどれに当てはまるのか不明瞭の場合はご遠慮なくお問い合わせくださいませ。
―記事を書いたのは私です―
行政書士あくろ事務所 代表
川戸 勇士
東大大学院博士課程修了/行政書士・薬剤師・博士(薬学)
薬・医療・国際化をキーワードとする許認可手続きを業務の柱として、すべての人が健康で豊かな暮らしを実現できる社会を目指しています。
レモンサワー・とり天・うなぎが大好物。
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