広告などでは化粧品と医薬部外品の効能効果の逸脱に注意
薬機法では、化粧品と医薬部外品を明確に定義づけて分類しており、それぞれ記載できる効能効果の範囲が異なります。定められた効能効果の範囲を超えた表現を使用して広告や宣伝をした場合は、罰則等何かしらのペナルティを受けることになるので注意が必要です。見た目が化粧品のものでも、法律の規制上医薬部外品に該当するものもあれば、逆に医薬品のようなものでも化粧品に分類されるもあります。いわゆる薬用化粧品は医薬部外品であり、化粧品と効能・効果が異なりますので特に注意が必要です。今一度、医薬部外品、薬用化粧品(=医薬部外品)、化粧品の効能・効果の範囲を確認しておきましょう。

化粧品の効能
いわゆる56効能と呼ばれるもので、下記にあげたものが規定されています(厚労省通知:薬食発 0721 第 1 号)。より詳しく化粧品の定義に関して知りたい方は、当サイト(化粧品の定義~そもそも化粧品とは~)をご参照ください。
- 頭皮、毛髪を清浄にする。
- 香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。
- 頭皮、毛髪をすこやかに保つ。
- 毛髪にはり、こしを与える。
- 頭皮、毛髪にうるおいを与える。
- 頭皮、毛髪のうるおいを保つ。
- 毛髪をしなやかにする。
- クシどおりをよくする。
- 毛髪のつやを保つ。
- 毛髪につやを与える。
- フケ、カユミがとれる。
- フケ、カユミを抑える。
- 毛髪の水分、油分を補い保つ。
- 裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。
- 髪型を整え、保持する。
- 毛髪の帯電を防止する。
- (汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。
- (洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。
- 肌を整える。
- 肌のキメを整える。
- 皮膚をすこやかに保つ。
- 肌荒れを防ぐ。
- 肌をひきしめる。
- 皮膚にうるおいを与える。
- 皮膚の水分、油分を補い保つ。
- 皮膚の柔軟性を保つ。
- 皮膚を保護する。
- 皮膚の乾燥を防ぐ。
- 肌を柔らげる。
- 肌にはりを与える。
- 肌にツヤを与える。
- 肌を滑らかにする。
- ひげを剃りやすくする。
- ひげそり後の肌を整える。
- あせもを防ぐ(打粉)。
- 日やけを防ぐ。
- 日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。
- 芳香を与える。
- 爪を保護する。
- 爪をすこやかに保つ。
- 爪にうるおいを与える。
- 口唇の荒れを防ぐ。
- 口唇のキメを整える。
- 口唇にうるおいを与える。
- 口唇をすこやかにする。
- 口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ。
- 口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。
- 口唇を滑らかにする。
- ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
- 歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
- 歯垢を除去する(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
- 口中を浄化する(歯みがき類)。
- 口臭を防ぐ(歯みがき類)。
- 歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
- 歯石の沈着を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
- 乾燥による小ジワを目立たなくする。

医薬部外品の効能・効果
「医薬部外品」には、厚生労働大臣が効能・効果を認可した有効成分が一定濃度で配合されており、その成分の名前や効能・効果を表示することができます。 医薬品が治療を目的としているのに対して、医薬部外品は予防・防止・衛生を目的としています。下表に薬機法の規定に基づく主な医薬部外品の種類、使用目的、効能・効果を示しています。より詳しく言えば、ここに挙げた医薬部外品については原則的な剤型も示されていますが、今回は割愛します。
種類 | 目的 | 効能・効果 |
---|---|---|
1. 口中清涼剤 | 吐き気その他の不快感の防止を目的とする内用剤 | 口臭、気分不快。 |
2. 腋臭防止剤 | 体臭の防止を目的とする外用剤 | わきが(腋臭) 、皮膚汗臭、制汗。 |
3. てんか粉剤 | あせも、ただれ等の防止を目的とする外用剤 | あせも、おしめ(おむつ)かぶれ、 ただれ、股ずれ、かみそりまけ。 |
4. 育毛剤(養毛剤) | 脱毛の防止及び育毛を目的とする外用剤 | 育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、 毛生促進、発毛促進、 ふけ、病後・産後の脱毛、養毛。 |
5. 除毛剤 | 除毛を目的とする外用剤 | 除毛。 |
6. 染毛剤(脱色剤、脱染剤) | 毛髪の染色、脱色又は脱染を目的とする外用剤 毛髪を単に物理的に染毛するものは医薬部外品には非該当 | 染毛、脱色、脱染。 |
7. パーマネントウェーブ用剤 | 毛髪のウェーブ等を目的とする外用剤 | 毛髪にウェーブをもたせ、保つ。 くせ毛、ちぢれ毛又はウェーブ毛髪をのばし、保つ。 |
8. 衛生綿類 | 衛生上の用に供されることが目的とされている綿類(紙綿類を含む) | 生理処理用品については生理処理用、 清浄用綿類については乳児の皮膚・口腔の清浄・清拭 又は授乳時の乳首・乳房の清浄・清拭、目、局部、肛門の清浄・清拭 |
9. 浴用剤 | 原則としてその使用法が浴槽中に投入して用いられる外用剤(浴用石鹸は浴用剤に非該当) | あせも、荒れ性、打ち身(うちみ)、くじき、 肩の凝り(肩のこり)、神経痛、湿しん(しっしん)、 しもやけ、痔、冷え性、腰痛、リウマチ、疲労回復、 ひび、あかぎれ、産前産後の冷え性、にきび。 |
10. 薬用化粧品(薬用石けんを含む) | 化粧品としての使用目的を併せて有する化粧品類似の剤型の外用剤 | ※次の項目、「薬用化粧品の効能・効果」を参照 |
11. 薬用歯みがき類 | 化粧品としての使用目的を有する通常の歯みがきと類似の剤型の外用剤 | 歯を白くする、口中を浄化する、 口中を爽快にする、歯周炎(歯槽膿漏)の予防、 歯肉炎の予防、歯石の沈着を防ぐ。 むし歯を防ぐ。 むし歯の発生及び進行の予防、口臭の防止、タバコのやに除去、歯がしみるのを防ぐ。 |
12. 忌避剤 | はえ、蚊、のみ等の忌避を目的とする外用剤 | 蚊成虫、ブユ(ブヨ)、サシバエ、ノミ、イエダニ、 トコジラミ(ナンキンムシ)等の忌避。 |
13. 殺虫剤 | はえ、蚊、のみ等の駆除又は防止の目的を有するもの | 殺虫。 はえ、蚊、のみ等の衛生害虫の駆除又は防止。 |
14. 殺そ剤 | ねずみの駆除又は防止の目的を有するもの | 殺そ。 ねずみの駆除、殺滅又は防止。 |
15. ソフトコンタクトレンズ用消毒剤 | ソフトコンタクトレンズの消毒を目的とするもの | ソフトコンタクトレンズの消毒。 |

薬用化粧品の効能・効果
医薬部外品の中でも本質的に化粧品として利用されるものについては「薬用化粧品」とよび、さらに細かく種類と効能・効果を定めています。
種類 | 効能・効果 |
---|---|
1. シャンプー | ふけ・かゆみを防ぐ。 毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ。 毛髪・頭皮を清浄にする。 毛髪をすこやかに保つ。(※1) 毛髪をしなやかにする。(※1) |
2. リンス | ふけ・かゆみを防ぐ。 毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ。 毛髪の水分・脂肪を補い保つ。 裂毛・切毛・枝毛を防ぐ。 毛髪・頭皮をすこやかに保つ。(※2) 毛髪をしなやかにする。(※2) |
3. 化粧水 | 肌あれ・あれ性。 あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防ぐ。 油性肌。 かみそりまけを防ぐ。 日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。 日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。 肌をひきしめる。肌を清浄にする。肌を整える。 皮膚をすこやかに保つ。 皮膚にうるおいを与える。 |
4. クリーム 乳液 ハンドクリーム 化粧用油 | 肌あれ。あれ性。 あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを 防ぐ。 油性肌。 かみそりまけを防ぐ。 日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。(※3) 日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。 肌をひきしめる。肌を清浄にする。肌を整える。 皮膚をすこやかに保つ。皮膚にうるおいを与える。 皮膚を保護する。皮膚の乾燥を防ぐ。 |
5. ひげそり用剤 | かみそりまけを防ぐ。 皮膚を保護し、ひげをそりやすくする。 |
6. 日やけ止め剤 | 日やけ・雪やけによる肌あれを防ぐ。 日やけ・雪やけを防ぐ。 日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。(※3) 皮膚を保護する。 |
7. パック | 肌あれ。あれ性。 にきびを防ぐ。 油性肌。 日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。(※3) 日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。 肌をなめらかにする。 皮膚を清浄にする。 |
8. 薬用石けん (洗顔料を含む) | <殺菌剤主剤>(消炎剤主剤をあわせて配合するものを含む) 皮膚の清浄・殺菌・消毒。 体臭・汗臭及びにきびを防ぐ。 <消炎剤主剤のもの> 皮膚の清浄、にきび・かみそりまけ及び肌あれを 防ぐ。 |
(※1)二者択一 (※2)二者択一 (※3)作用機序によっては、「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ。」も認められる。 |
厚生労働省の通知(課長通知:薬生監麻発0929第5号)には、薬用化粧品の広告について下記のように示されています。
「医薬部外品の効能効果は、品目ごとに成分分量を審査の上承認されたものであるから、その承認の範囲内で広告することが原則であるが、次の事柄に配慮すれば、広告表現中に化粧品の効能効果のうち、それぞれの種別に対応する効能効果を併せて標ぼうすることができる。」
- 医薬部外品本来の目的が隠ぺいされて化粧品であるかのような誤認を与えないこと。
- 化粧品的な使用目的、用法で使用された場合に保健衛生上問題となるおそれのあるもの(殺菌剤配合のシャンプー又は薬用石けんなど)ではないこと。
- 化粧品の効能効果として標ぼうしている部分が、あたかも医薬部外品の効能効果として承認を受けたものであるかのような誤認を与えないこと。
数回読む程度では何を言っているのかまったく理解できませんが、要するに誤解を与えない範囲であれば、上記の薬用化粧品として定められている効能・効果に加えて、化粧品で定められている56の効能範囲を追加して広告してもいいということです。薬用化粧品は医薬部外品そのものなので、本来は医薬部外品の効能・効果のみで広告すべきあり、化粧品の効能は表記できないはずですが、本質的に化粧品という実情を踏まえて少し融通を利かせている感じです。ただし、繰り返しますが薬用化粧品はあくまで医薬部外品です。化粧品の効能範囲だけを広告して薬用化粧品を販売するといったことは違反であることに注意が必要です。

以上、化粧品と医薬部外品、その両方の性質をもつ薬用化粧品、それぞれの効能・効果の範囲を今一度ご確認くださいませ。

―記事を書いたのは私です―
行政書士あくろ事務所 代表
川戸 勇士
東大大学院博士課程修了/行政書士・薬剤師・博士(薬学)
薬・医療・国際化をキーワードとする許認可手続きを業務の柱として、すべての人が健康で豊かな暮らしを実現できる社会を目指しています。
レモンサワー・とり天・うなぎが大好物。
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