はじめに
「企業内転勤」ビザとは、海外にある本社から日本の支店に転勤してくる外国人が対象となる就労ビザです。企業内転勤は新たな外国人を雇用する場合と比較し、適切な自社の社員を確実に呼び寄せることができるメリットがあります。
転勤の意味合いとして、同一法人内の異動のもならず、系列企業でいう親会社、子会社、関連会社内の出向が含まれます。申請人である外国人については、転勤の直前に海外の事業所で「技術・人文知識・国際業務」ビザに基づいて行うことができる業務に1年以上従事していなければならず、日本人と同等額以上の報酬を受け取らなければならないといった要件があります。
転勤という条件を除けば、”企業内転勤ビザ≒技術・人文知識・国際業務ビザ”ですが、それぞれの要件等について詳しく確認しましょう。
在留資格該当性
企業の形態
下記の条件を満たす海外にある本社から日本へ出向・転勤してくる外国人が対象です。ただし、出向・転勤の意味合いがかなり広く、次で詳しく説明します。
- 外国と日本の両方に事業所を持つ公私の機関
- 「公私の機関」は会社に限らず、独立行政法人、公益法人、その他の団体や個人営業も含む
転勤とは
「転勤」と言えば、一般には同一法人内での異動です。一方、入管法上企業内転勤ビザの「転勤」の意味としては、系列企業(親会社、子会社、関連会社)の間の出向等も含まれます。具体的なパターンを確認しましょう。
本社⇔支社(本店⇔支店)
本社と支社の間の異動は「転勤」に含まれます。
親会社⇔子会社
親会社と子会社の間の異動は「転勤」に含まれます。また、いわゆる孫会社は親会社のみなし子会社となるため、親会社⇔孫会社、子会社⇔孫会社(子会社が孫会社にとっての親会社なので、親会社⇔子会社と同一の扱い)の異動も「転勤」です。
子会社・孫会社⇔子会社・孫会社
子会社間の異動は「転勤」です。同様に、孫会社間の異動も「転勤」です。そして、子会社と他系列の孫会社間の異動も「転勤」です。
関連会社への異動
関連会社への異動は「転勤」です。ただし、直属の関連会社のみが対象です。例えば、親会社から親会社の関連会社Aへの異動は転勤ですが、親会社から親会社の子会社の関連会社Bへの異動は転勤ではありません。
期間の定め
企業内転勤ビザでは日本の事業所での勤務が一定期間に限られていることが必要です。逆に言えば、期間を定めずに転勤する場合は企業内転勤ビザの対象とならず、技術・人文知識・国際業務ビザの対象となります。
上陸許可基準
上陸許可基準と聞くとよくわからない感じがしますが、簡単に言えば各々の在留資格(就労ビザ)を取得するための前提となる許可要件のことです。「企業内転勤」ビザの場合、下記の2点が定められています。このことからも、学歴・実務経験が設定されていない点が類似在留資格「技術・人文知識・国際業務」ビザとの大きな違いです。
- 転勤直前に海外にある事業所にて技術・人文知識・国際業務ビザで定めている活動に継続して1年以上従事している
- 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受け取る
なお、転勤前の業務については術・人文知識・国際業務ビザで定めている活動であれば十分であり、転勤後の日本で従事する業務と同一または関連する業務であることまでは不要です。例えば、海外の事業所ではプログラマーであったが、転勤後日本ではシステムエンジニアとして働くといった類似業種はもちろん、場合によりますが海外では営業や管理業務を行っていたが日本では通訳・翻訳業務を行うなども可能です。
活動内容
「企業内転勤」で行うことができる活動は、「技術・人文知識・国際業務」ビザに基づいて行うことができる活動です。ただし、条件として企業内転勤の形で海外から日本国内の事業所に転勤して当該事業所で行う活動でなければなりません。つまり、転勤先の事業所から日本国内の別の事業所へ異動して勤務することは認められません。
在留期間
「企業内転勤」ビザの在留期間は5年・3年・1年・3ヵ月のいずれです。
まとめ
「企業内転勤」ビザについて基本的事項を確認しました。 「企業内転勤」ビザは同一企業等の内部で外国の事業所から日本の事業所に一定期間転勤して、技術・人文知識・国際業務ビザの活動を行う活動が対象になります。
よく似ている就労ビザとして「技術・人文知識・国際業務」ビザあります。どちらの就労ビザを取得して外国人を呼び寄せるかは、個々の状況に応じて検討が必要です。参考までに2つの就労ビザの違いをまとめています。ご不明な点がございましたら、お気軽に当事務所へご相談ください。静岡県、愛知県を中心に全国47都道府県のお手続きに対応可能です。
企業内転勤 | 技術・人文知識・国際業務 | |
---|---|---|
雇用期間 | 一定期間 | 無制なし |
勤務先 | 転勤した事業所に限る (転職不能) | 制限なし (転職可能) |
学歴・実務経験 | 不要 | 必要 |
報酬の支払主体 | 外国の事業所も可 | 雇用契約の締結主のみ |
「企業内転勤」の申請手続き 企業のカテゴリー分類とは 「企業内転勤」ビザの申請においては、入管が申請書類の一部を省略しても差し支えないと認める場合があります。実務上、受け入れ企業の規模に応じてカテゴリー分けがされており、カテゴ[…]
―記事を書いたのは私です―
行政書士あくろ事務所 代表
川戸 勇士
東大大学院博士課程修了/行政書士・薬剤師・博士(薬学)
薬・医療・国際化をキーワードとする許認可手続きを業務の柱として、すべての人が健康で豊かな暮らしを実現できる社会を目指しています。
レモンサワー・とり天・うなぎが大好物。
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