留学生の卒業後の就職活動

「留学」ビザ 就職活動や卒業後の入管手続き

はじめに

外国人留学生が日本の大学等を卒業後、引き続き日本の企業等へ就職して日本国内で暮らすことを希望する場合、いくつか注意することがあります。日本で就活をしている場合、就職先と在留資格の関係が問題になります。また、もし卒業までに内定を得ることができなかった場合、卒業後も就活を続けることができるのでしょうか。一つ一つ確認していきましょう。

留学生の卒業後の就職活動

留学生の就職と入管手続き

在留資格変更の一般論

在留資格「留学」(留学ビザ)はあくまで勉強するために与えられた在留資格です。外国人留学生が日本の大学等を卒業して就職する場合、就職先の職種、従事する業務の内容に応じて在留資格の変更(各種就労ビザへの変更)が必要です。

当然、在留資格の変更が認められるためには、変更後の在留資格への該当性や要件を満たさなければなりません。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」(技人国ビザ)への変更

留学生が就職によって在留資格を変更する場合、その9割以上が在留資格技術・人文知識・国際業務(技人国ビザ)への変更です。技人国ビザでは、大学等での専攻科目と従事予定の業務の関連性が必要です。関連性という言葉は抽象的であり、「関連の範囲」がどこまでなのか判断に悩む場合も多いです。この件について、大学を卒業した場合と専修学校を卒業した場合とで基準が少し異なります。

大学を卒業した場合、上記の関連性はかなり柔軟に対応されます。これは、企業においては大学で得た知識や技術の素養を必要としつつも、直接的に使用する場面があまりないことを反映させた判断基準です。一方で、専修学校を卒業した場合では、そもそも専修学校が職業や実生活に必要な能力を育成すること、教養の向上をはかることを目的としていることから、専攻科目と業務との間に相当程度の関連性が求められます。

在留資格「特定活動」(本邦大学卒業者)への変更

2019年より、在留資格「特定活動」の類型の一つに本邦大学卒業者が追加されました。「技術・人文知識・国際業務」では、一般的なサービス業務や製造業務が主たる活動となるものは認められていませんが、こちらの「特定活動(本邦大学卒業者)」では、留学生としての経験を通じて得た高い日本語能力を活用することを要件として、上記の業務を行うことが可能です。

要件は比較的厳しく、下記の要件にすべて該当する必要があります。また、「特定活動(本邦大学卒業者)」を与えられる外国人は、法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて、当該機関の常勤職員として行う当該機関の業務に従事する活動です。在留資格が与えられる際に就労先機関が指定されることになるので、転職などで就労先が変わると在留資格も変更する必要が生じます。

  1. 本邦の大学(短期大学を除く)を卒業しまたは大学院の課程を修了して学位を授与されたこと
  2. 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること
  3. 日常的な場面で使われる日本語に加えて、論理的にやや複雑な日本語を含む幅広い場面で使われる日本語を理解できる能力を有していることを試験その他の方法により証明されていること
  4. 本邦の大学(短期大学を除く)を卒業しまたは大学院において修得した広い知識および応用的能力を活用するものと認められること

就職できなかった場合は?

大学等の卒業までに就職内定が得られず、卒業後も就職活動を継続する場合、一定の要件のもとで「特定活動(告示外)」への変更が認められます。

ご参照ください

内定がなかった場合、卒業後も日本に滞在できる? 外国人留学生の中には、日本で就職して卒業後も引き続き日本国内に在留することを希望する方が少なくありません。日本政府もこれを積極的にサポートすることを目的に、2019年に在留資格「特定活[…]

在留資格「特定活動」と留学生の就活

卒業後1年目の就職活動

大学や専門学校の卒業後、在留資格「留学」の在留期間満了後も日本に残って就職活動を継続したい場合、在留状況に問題がなく、就職活動の継続にあたって卒業した教育機関からの推薦などがある場合、就職活動を行うための在留資格「特定活動(告示外)」への変更が認められます。在留期間は6ヶ月となっており、さらに1回だけ在留期間の更新が認められます。したがって、大学などを卒業後も最大1年間は就職活動を継続することが可能です。

これらを行おうとする外国人を、継続就職活動大学生(専門学校生)と呼びます。

卒業後2年目の就職活動

在留資格を変更して1年間就職活動を継続している留学生、すわなち継続就職活動大学生(専門学校生)は、地方公共団体が実施する就職支援事業(政府の設定する要件に適合するものに限る)の対象となります。地方公共団体からその事業の対象者であることの証明書の発行を受けて、同事業に参加してインターンシップへの参加を含む就職活動を行うことを希望する場合は、さらに最大1年間滞在を延長することが可能です。

就職活動中のアルバイト

上記で挙げた1年目、2年目のいずれの場合においても、一定の要件を満たせば資格外活動の許可を受け、週28時間以内でアルバイトに従事できます(包括許可)。また、就職活動の一環として行うインターンシップの場合などは、週28時間を超える資格外活動の許可を受けることもできます(個別許可)。

ご参照ください

留学生の就労は原則禁止!コンビニで見かけるアルバイトは? 在留資格「留学」、一般的に「留学ビザ」と呼ばれます。「留学」は、日本に居住する外国人が日本の教育機関で「教育を受ける活動」のために与えられる在留資格ですので、原則として就労活[…]

在留資格「留学」 留学ビザと就労

内定から採用までの在留

日本国内の企業等での採用時期は4月であることが多いです。大学や専門学校を9月に卒業する者が在学中に就職先が内定した場合、あるいは上記の継続就職活動大学生(専門学校生)が年度途中で就職先が決まり、4月の採用までの待機期間がある場合、所有している在留資格のまま日本に在留することは可能でしょうか。

このような場合、採用が内定後1年以内かつ卒業後1年6ヵ月以内であることなどを条件として、採用までの間は「特定活動(告示外)」の在留資格で引き続き在留することが認められます。

まとめ

留学生の就職活動と在留資格の関係について簡単に紹介しました。留学生が就職する場合、在留資格の変更が必要です。最も多いパターンである「技術・人文知識・国際業務」に変更する場合、専攻科目と就職先における業務内容の関連性が求められます。また、「特定活動(本邦大学卒業者)」に変更する場合では、一般的なサービス業務や製造業務等が主たる活動となるものも認められます。就職活動に際して内定が得られなかった場合、一定要件の下で「特定活動(告示外)」への在留資格の変更が認められる場合があり、卒業後も就活を継続できます。

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川戸勇士 静岡県磐田市の行政書士

―記事を書いたのは私です―

行政書士あくろ事務所 代表
川戸 勇士

東大大学院博士課程修了/行政書士・薬剤師・博士(薬学)
薬・医療・国際化をキーワードとする許認可手続きを業務の柱として、すべての人が健康で豊かな暮らしを実現できる社会を目指しています。
レモンサワー・とり天・うなぎが大好物。


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