高度専門職ビザのポイント制とは

「高度専門職」ビザのポイント制とは

はじめに

少子高齢化の影響で多くの日本企業が人材不足に悩まされている中、優秀な外国人材の争奪戦に日本は世界から大きく出遅れています。政府は、高度外国人材の受け入れを促進するための国策として2012年より「高度人材ポイント制」を導入しています。

高度専門職ポイント計算表に基づくポイント計算の合計が70点以上であると高度外国人材と認められ、「高度専門職」ビザの在留資格認定証明書交付申請を行うことができます。導入当初は高度人材ポイント制の目標認定件数を、2022年末までに20,000人としていましたが、2019年末にはすでに21,347人となり目標を達成しており、今後も増加が見込まれています。

主要項目の解説

高度人材ポイントの計算方法は、ポイント計算表に従い在留資格申請者本人が希望する「活動内容」「学歴」「職歴」「年収」「年齢」「資格」などに応じて評価が実施されます。以下では主要項目について解説します。

学歴

「大学」「大学と同等以上の教育を受けた者」

「大学」には短大も含みます。「大学と同等以上の教育を受けた」とは、具体的には高等専門学校の卒業、専修学校の専門課程修了(修業年限4年以上、高度専門士)を指します。

複数の分野で博士、修士の学位または専門職学位を有する場合

学位の組合せは問いません。学位記や学位証明書により、専攻が異なることが明らかにできればポイント加算対象です。

「経営・管理に関する専門職学位」

一般にMBAやMOTが該当します。海外のMBA等の学位についても「経営・管理に関する専門職学位」に相当するものであればポイント加算対象です。

日本における専門職学位を付与する専門職大学院の一覧はコチラから

報酬

報酬とは

報酬とは、具体的には「基本給」「勤勉手当」「調整手当」「賞与(ボーナス)」等です。「通勤手当」「扶養手当」「住宅手当」等の課税対象外のもの(実費の性質を有するもの)は含まれません。

少しだけ注意することは、「超過勤務手当(残業代等)」はポイント計算の「報酬」には含まれません。入国時点でどの程度の超過勤務が生じるかを確定できないためです。これは在留期間更新申請の際にも同様の考え方が採用されており、ポイント計算の「報酬」はあくまで予定年収に基づいて判断するので、過去に支給された「超過勤務手当」は含まれません。

海外の会社から支払われる報酬

報酬が海外の会社から支払われる場合でもポイント計算における報酬の対象です。外国企業から日本へ転勤する場合などで考える項目です。

最低年収基準

「高度専門職1号ロ・ハ」では、年収が300万円未満の場合、仮に他の項目で合計70ポイントを達成していてもビザが不許可になります。

イノベーション促進支援措置や試験研究比率に係るポイント付与の対象となる中小企業

中小企業基本法第2条第1項に規定する中小企業者をいい、業種・資本金規模・従業員規模別に以下のとおりとなります。

  1. 製造業その他:
    資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
  2. 卸売業:
    資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
  3. 小売業:
    資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
  4. サービス業:
    資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

細かいですが、会社の「役員」および個人事業者の「事業主」は従業員数に含みません。また、労働基準法第20条の「解雇の予告」に該当する労働者であれば、パート・出向者を従業員数に含めることができます。なお、飲食店は「小売業」として取り扱われます。

試験研究費等比率が3%以上の中小企業に勤務する場合

試験研究費等=試験研究費および開発費

企業の申請日の前事業年度(申請日が前事業年度経過後2月以内である場合は前々事業年度)における経費が、売上高または事業所得の3%を超えている中小企業の場合に勤務する場合、ポイント加算対象となります。

「試験研究費」とは、以下の目的のために特別に支出する費用が該当します。

  1. 新しい製品の製造
  2. 新しい技術の発明に係る試験研究

「開発費」とは、以下の目的のために特別に支出する費用が該当します。

  1. 新しい技術もしくは新しい経営組織の採用
  2. 資源の開発
  3. 市場の開拓
  4. 新しい事業の開始

上記の試験研究や開発を行うために必要な具体的費用としては、以下の経費などが含まれます。

  • 原材料費
  • 人件費・・・専門的な知識でその試験研究または開発の業務にもっぱら従事している人のみ
  • 経費・・・他の研究機関等に委託して試験研究または開発を行う場合の委託費用をふくみます。

「将来において成長発展が期待される分野の先端的な事業」

IoTや再生医療等のせいちょうぶんやの事業であって、所管省庁が関与している先端プロジェクトが対象です。

法務大臣が告示をもって定める大学

以下のいずれかの大学を卒業するとポイントの加算対象となります。なお、この特別加算は「日本の大学を卒業し、または大学院を修了して学位を授与されたこと」と重複して加算することが認められています。

  1. 以下の大学ランキングで2つ以上において上位300位以上に該当する大学
    1. QSワールド・ユニバーシティ・ランキングス
    2. THE・ワールド・ユニバーシティ・ランキングス
    3. アカデミック・ランキング・オブ・ワールド・ユニバーシティズ
  2. スーパーグローバル大学創成支援事業で補助金の交付を受けている大学
    ただし、トップ型およびグローバル化けん引型に限る
  3. イノベーティブ・アジア事業でパートナー校として指定を受けている大学

法務大臣が告示をもって定める研修

法務大臣が告示をもって定める研修とは、外務省が実施するイノベーティブ・アジア事業の一環として外務省から委託を受けた独立行政法人国際協力機構(JICA)が日本国内で実施する研修のうち、研修期間が1年以上のものを指します。

この研修を修了して研修修了証明書を提出した場合には、学歴に関する資料の提出は不要となります。ただし、職歴のポイント加算を希望する場合には、別途職歴に関する資料の提出は必要です。

なお、日本国内の大学・大学院の授業を利用して行われる研修に参加した場合には、「日本の高等教育機関(大学・大学院)における学位取得(卒業・大学院の課程修了)」と重複して加算することは認められません。

まとめ

「高度専門職」ビザのポイント制について概要を解説しました。ビザ申請では制度の概要把握や必要書類の正確な理解が必要です。ご不安やご不明な点がございましたら、お気軽に当事務所へご相談ください。入管申請手続きの専門家である当事務所が責任をもって手続き完了までサポートいたします。

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ご参照ください

はじめに 「高度専門職」ビザとは、特に日本の経済成長やイノベーションへの貢献が期待される能力や資質に優れた人材(高度外国人材)を対象とする在留資格です。「高度専門職」ビザで認められる活動はいくつかカテゴリーがあり、それぞれ「高度専門[…]

高度専門職ビザの概要
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企業のカテゴリー分類とは 高度専門職ビザの申請においては、入管が申請書類の一部を省略しても差し支えないと認める場合があります。実務上、受け入れ企業の規模に応じてカテゴリー分けがされており、カテゴリーごとに必要とされる資料や書類に差が[…]

高度専門職ビザの申請手続き
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高度専門職ビザの優遇措置

川戸勇士 静岡県磐田市の行政書士

―記事を書いたのは私です―

行政書士あくろ事務所 代表
川戸 勇士

東大大学院博士課程修了/行政書士・薬剤師・博士(薬学)
薬・医療・国際化をキーワードとする許認可手続きを業務の柱として、すべての人が健康で豊かな暮らしを実現できる社会を目指しています。
レモンサワー・とり天・うなぎが大好物。


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