技能実習ビザ企業単独型の受け入れや要件

「技能実習」ビザ 受け入れ方法: 企業単独型

はじめに

技能実習制度は、経済発展・産業振興の担い手を育成したいという発展途上地域のニーズに応えるため、日本の技能、技術、知識の開発途上地域等への移転し、開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することが主な目的です。一定期間において日本の企業等がそれら地域からの人材を技能実習生として受け入れ、雇用契約を締結し、外国人実習生が自分の国では学ぶことが難しい技能等の修得・習熟・熟達を促進する「民間による人材育成を通じた国際協力の仕組み」です。

なお、上記の制度の目的が形骸化し、技能実習生を安価な労働力として受け入れてきた企業が多数存在してきたことは事実ですが、労働力不足を補うことを目的として技能実習制度を活用することは本来の趣旨からは大きく逸脱していますので注意が必要です。

外国人技能実習生を受け入れる方式は2種類、企業単独型監理団体型に分類されます。

  1. 企業単独型(技能実習各号イ)
    日本の企業などの実習実施機関が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施
  2. 監理団体型(技能実習各号ロ)
    商工会や中小企業団体など営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業などの実習実施機関で技能実習を実施

ここでは、①の企業単独型での技能実習生の受け入れについて概要を説明します。

「技能実習1号イ」の目的と活動

技能実習1号は、これから新たな技術を日本での技能実習によって習得したいと考えている外国人に向けた在留資格であり、その目的は「入国1年目の技術の修得を目指す」こととされています。

「技能実習1号イ」では日本の企業などの実習実施機関が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施します。「技能実習1号イ」で行うことができる活動は、実習実施機関(受け入れ企業)が入国後2ヵ月間行う講習による知識の修得活動と、その講習を終えた後に実習実施機関との雇用契約に基づいて行う技能等の修得活動です。

「技能実習1号イ」で受け入れることができる外国人技能実習生とは、次のいずれかの事業所の職員です。

  1. 日本の公私の機関の外国にある事業所(支店、子会社又は合弁企業など)
  2. 日本の公私の機関と引き続き1年以上の国際取引の実績または過去1年間に10億以上の国際取引の実績を有する機関
  3. 日本の公私の機関と国際的な業務上の提携を行っているなどの事業上の関係を有する機関で法務大臣が告示を持って定めるもの

技能実習生に係る要件

  1. 習得しようとする技能等が単純作業でないこと。
  2. 18歳以上で、帰国後に日本で習得した技能等を生かせる業務に就く予定があること。
  3. 母国で習得することが困難な技能等を習得するものであること。
  4. 本国の国、地方公共団体等からの推薦を受けていること。
  5. 日本で受ける技能実習と同種の業務に従事した経験を有すること。
  6. 技能実習生(その家族を含む)が、送出機関、実習実施機関等から保証金等を徴収されないこと。また、労働契約不履行に係る違約金を定める契約等が締結されていないこと。

実習実施機関に係る要件

  1. 次の科目についての座学講習を「技能実習1号イ」活動予定時間の6分の1以上の時間実施すること帆※在留期間1年であれば2ヵ月以上ということになります
    ※海外で1ヵ月以上かつ160時間以上の事前講習を実施している場合、12分の1以上に緩和されます。
    1. 日本語
    2. 日本での生活一般に関する知識
    3. 入管法、労働基準法等技能実習生の法的保護に必要な情報
      専門的知識を有する講師が行うこと(外部講師を招く場合:国・地方公共団体の職員、弁護士、社会保険労務士、行政書士など)
    4. 円滑な技能等の習得に資する知識
  2. 監理費用の明確化、技能実習継続不可能時の対応、帰国旅費および技能実習生用宿舎の確保、労災保険等の保障措置、役員などに係る欠格事由等の要件あり。
  3. 実習生に対する報酬は、日本人が従事する場合の報酬と同等額以上であること
  4. 技能実習指導員及び生活指導員を配置していること
    技能実習が5年以上の経験を有する技能実習指導員の指導の下に行われること
  5. 技能実習日誌を作成し備え付け、技能実習終了後1年以上保存すること
  6. 技能実習生用の宿舎確保、労災保険等の保障措置、経営者等に係る欠格事由等の要件あり

技能実習生の受け入れ人数

常勤職員総数の20分の1までとします。なお、常勤職員には外国にある事業所に所属する常勤職員および技能実習生(1号および2号)は含まれません。

※法務大臣が告示を持って定める場合は以下と通り。

実習実施機関の常勤職員総数技能実習生の人数
301人以上常勤職員総数の20分の1
201人以上300人以下15人
101人以上200以下10人
51人以上100人以下6人
50人以下3人

滞在期間

「技能実習1号」による滞在期間は1年以内です。1年または6ヵ月の在留期間が付与されます

技能実習生の保護

適正な技能実習が行われるために、監理団体と受入企業などを対象として下記の禁止行為が法律によって定められています。

強制の禁止

実習監理者等(実習の監理を行う者またはその役員・職員)は、暴行・脅迫・監禁等により技能実習生の意思に反して技能実習を強制することが禁止されています。(技能実習法46条)。

賠償予定の禁止

実習監理者等は、技能実習に関する契約不履行について違約金を定め、損害賠償額を予定する契約をしてはならない(同47条1項)。

強制貯蓄の禁止

実習監理者等は、技能実習に係る契約に付随して貯蓄・貯蓄金管理の契約をさせてはならない(同47条2項)。

パスポート・在留カードの保管の禁止

技能実習関係者(技能実習を行わせる者もしくは実習監理を行う者またはその役員・職員)は、技能実習生のパスポート・在留カードを保管してはならない(同48条1項)。

外出制限等の禁止

技能実習関係者は、技能実習生の外出その他の私生活の自由を不当に制限してはならない(同48条2項)。

「技能実習2号イ」への在留資格変更の要件

技能実習生に係る要件

  1. 技能実習が「技能実習1号イ」と同一の実習実施機関で、かつ同一の技能等について行われること
  2. 基礎2級の技能検定その他これに準ずる検定または試験に合格していること
  3. 技能実習計画に基づき、さらに実践的な技能などを習得しようとするものであること

実習実施機関に係る要件

「技能実習1号イ」の要件と同じ

技能実習生の受け入れ人数

「技能実習1号イ」のような制限なし

滞在期間

次の3点すべてに該当すること

  1. 「技能実習1号イ」に応じた滞在期間が1年以下であること
  2. 「技能実習1号イ」に応じた滞在期間が9ヵ月以下である場合は、「技能実習2号イ」に応じた滞在期間が「技能実習1号イ」の滞在期間のおおむね1.5倍以内であること
  3. 「技能実習2号イ」と「技能実習1号イ」に応じた滞在期間を合わせて3年以下であること

評価

「技能実習1号イ」から「技能実習2号イ」への移行が認められるためには、次の2つの評価を満たした上で、さらに在留状況が良好であると評価されることが必要です。

  1. 「技能実習1号イ」の全期間の4分の3程度を経過した時点で、国の技能検定基礎2級相当以上の技能等を習得していること
  2. 「技能実習2号イ」の技能実習計画が「技能実習1号ロ」の成果の評価を踏まえた適正なものであること

受け入れまでの流れ

企業単独型での技能実習生の受け入れにおいては、外国人技能実習機構から実習計画の認定を受ける必要があります。その後、地方出入国管理局にて技能実習生の在留資格認定証明書を取得し、日本へ入国する流れです。

  1. 雇用契約の締結
  2. 外国人技能実習機構にて実習計画の作成・申請
  3. 外国人技能実習機構にて実習計画の認定
  4. 地方出入国管理局にて、在留資格認定証明書の交付申請
  5. 地方出入国管理局にて、認定証明書の交付。
  6. 受け入れ企業の日本法人から海外の支店等に在留資格証明書を送付
  7. 在外公館にて査証申請
  8. 査証発給
  9. 日本へ入国し、受け入れ企業で技能実習を開始

まとめ

外国人技能実習生を受け入れる方式は2種類あり、今回は企業単独型について解説しました。

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川戸勇士 静岡県磐田市の行政書士

―記事を書いたのは私です―

行政書士あくろ事務所 代表
川戸 勇士

東大大学院博士課程修了/行政書士・薬剤師・博士(薬学)
薬・医療・国際化をキーワードとする許認可手続きを業務の柱として、すべての人が健康で豊かな暮らしを実現できる社会を目指しています。
レモンサワー・とり天・うなぎが大好物。

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