外国人を雇用する場合の留意点
外国人が日本で就労するためには在留資格(就労ビザ)が必要です。就労ビザは従事する職種や業務ごとに細かく分類されているので、外国人を雇用後に従事してもらう予定の業務が就労ビザの資格対象となっているかどうか、特に注意が必要です。仮に外国人が持っているビザが就労ビザであっても、職種が異なれば職種に応じた就労ビザへ変更しなければなりません。
なお、ここでは外国人留学生等をアルバイトとして雇う場合ではなく、受け入れ企業との間で雇用契約を結んだ上で社員・従業員として採用する場面を想定しています。アルバイトとして雇う場合に必要な手続きや知識については下記を参考にしてください。
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書類選考や面接で取得すべき情報
就労ビザを取得するために重要となるのが学歴や職歴です。外国人を雇用する際は、企業等の受け入れ側が書類審査や面接等を通じてこれら事項についてしっかりと確認しなければなりません。可能であれば、履歴書や職務経歴書等の書式や記載内容をあらかじめ指定する方がスムーズに選考できます。
なお、外国人に限ったことではないですが、履歴書や職歴経歴書の内容を大きく脚色して記載する方が多いのが実情です。自己の能力や適性について強く主張する外国人も多くいます。それら主張の正当性を根拠をもって確認するように心がけましょう。職務経歴については前職で得たいた給与が参考になる場合があります。明らかに得るべき収入と経歴とに相違がみられる場合、職歴を疑う方がよいかもしれません。
- 氏名、生年月日、年齢、性別
- 住所、連絡先
- 国籍・地域
- 在留資格と在留期限(日本で暮らす外国人の場合)
- 資格外活動の許可の有無(留学生や家族滞在者を雇う場合)
- 保有資格
- 志望動機
- 日本語能力(会話だけでなく、読み書き能力も)
- 学歴
- 職歴
雇用契約に関する注意点
外国人の場合、日本人同士での常識が通用しない場面も生じるため、外国人の募集では具体的な労働条件を明示した雇用契約書を必ず作成してください。雇用契約の内容は就労ビザの取得にも大きく影響します。なお、外国人にも日本の労働基準法やその他労働関係法規が適用されます。最低賃金、契約期間、労働時間などは日本人と同様の扱いであり、外国人労働者を例外的に扱うことは許されません。
契約期間
労働基準法によれば、期間の定めのある雇用契約は3年を超えてはならないこととされています。就労ビザで許可される在留期間は多くの場合1年か3年です。1年ないし2年ごとに契約を更新する場合、残りの在留期間に応じて就労ビザの更新が必要になる場合があります。契約更新の要件についても契約書面で具体的に示しておきましょう。
業務内容と勤務地
日本人を雇用する場合、業務内容の詳細までを細かく雇用契約中に記載することは稀です。しかしながら、外国人との雇用契約については予定される業務内容を範囲まで含めて記載しておく方がベターです。外国人の多くは曖昧な表現や指示を好みませんし、これらは後々のトラブルの要因となります。
労働時間・休日・有給休暇
業務内容と同様に、労働時間や休日、休暇の取り方も含めて明確に記載しておくようにしてください。何時に始まり何時に終了するのか。休憩は何分でいつからいつまでなのか。休日はいつなのか、長期休暇はいつなのか、病欠時の扱いはどうなのか、有給休暇は何日付与されていているのか、急用による途中退社の扱いはどうなるのか、などなど。想定し得る事項は明確にし、お互いの認識を合わせておきましょう。
給与・賃金
受け入れ企業は同じ職種の日本人従業員と同等の給与を支給しなければなりません。また、最低賃金を下回ってもいけません。月給としていくらなのか、基本給が設定されているのか、時間外労働の有無と手当はいくらなのか、試用期間がある場合には給与がいくらになるのか、賞与の有無は、など。
労働契約の開始時期
就労ビザ取得のための申請手続きには受け入れ先企業との雇用契約書が必要なため、当然にビザ申請前に雇用契約を結ぶ必要があります。就労ビザ申請が不許可となる可能性はもちろん、審査期間が長引き契約書記載の入社予定日に就労ビザ取得が間に合わない場合もあります。
これらの事態を想定し、就労ビザが入社日までに取得できなかった場合への対応事項についても契約書に記載するようにしましょう。「本契約の効力発生は在留資格許可を得ることを条件とする」などの文言が一般的ですが、各企業の実情にそった内容にしましょう。
雇用契約の解除事項
雇用契約の解除条項を必ず盛り込むようにしてください。就労ビザの更新が許可されない場合の他、契約途中で企業側が解雇する場合の要件以外にも、外国人側から退職を申し出る場合の手続きも含めて明確にしましょう。
チェックリスト
在留資格
✓雇い入れの際、就労可能な在留資格の有無や在留期限を「在留カード」で確認する。
ただし、在留カードは外国人本人が市区町村役場へ行って手続きをするものなので、必ずしも最新情報が掲載されているとは限りません。プライバシーにも配慮し、在留カードの提示を求めることは採用が決定した後がよいです。
✓雇い入れの際や労働条件が変更になった際、雇用契約書の締結や労働条件通知書の交付を行う。
✓必要な就労ビザ等を取得(更新)できない場合を想定し、「採用内定の取消」や「労働契約は終了」に関する条項を雇用契約書(労働条件通知書)に含めている。
✓採用の際、就労資格証明書を取得しているか確認する。
就労資格証明書については下記を参照ください。
就労資格証明書とは 所持している在留資格が定めている活動内容と、実際に行っている(あるいは行う予定である)活動内容が一致していることを証明するための書類です。 就労ビザにはビザごとに就労の職種や業務内容が決まっています。職種が[…]
雇用管理
✓外国人労働者各人の在留期限を管理し、更新時期等を把握・確認している。
✓賃金や労働時間などの労働条件について、国籍を理由とした差別的な取扱いをしてはいけない。
✓外国人労働者各人のパスポートや在留カードを会社で保管してはいけない。
✓労働基準法等の労働関係法規を日本人労働者と同様に外国人労働者にも適用している。
✓外国人労働者に対しても、日本人労働者と同様に入社時および年1回の定期健康診断を実施している。
また、安全衛生教育を実施している。
✓外国人労働者を常時10人以上雇用するときは、雇用労務責任者を選任している。
その他
無事に雇用できた後においても、住居の確保や各種ライフライン契約のサポート、社会保険や雇用保険の適用、給与の処理など、社内で必要となる手続きは数多くありますが、これらは基本的には日本人労働者を雇用する場合と同様です。社内のみで適切に管理することにご不安ある場合には、社会保険労務士などの専門家に依頼することも有効です。
まとめ
慢性的な人材不足により、外国人労働者の採用を考える企業は年々増加しています。外国人雇用においては就労ビザの取得が一つのハードルになります。ここで扱ったポイントを理解・整理した上で、採用手続きを進めることで、よりスムーズなビザ申請につながります。
外国人雇用や就労ビザの取得でご不安がございましたら、ぜひ一度当事務所にお問い合わせくださいませ。静岡県、愛知県を中心に全国47都道府県のお手続きに対応可能です。
―記事を書いたのは私です―
行政書士あくろ事務所 代表
川戸 勇士
東大大学院博士課程修了/行政書士・薬剤師・博士(薬学)
薬・医療・国際化をキーワードとする許認可手続きを業務の柱として、すべての人が健康で豊かな暮らしを実現できる社会を目指しています。
レモンサワー・とり天・うなぎが大好物。
静岡県、愛知県を中心に全国47都道府県で外国人サポート、入管業務代行、ビザ申請可能!
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