はじめに ~外国人の口座開設~
会社設立では、資本金を振り込むための発起人の銀行口座が必要です。実務的には、日本の銀行の日本国内の本店、支店または外国の銀行の日本国内の支店いずれかの銀行口座が必要となります。ただし、外国人が日本の銀行口座を開設する場合、在留資格持っている方に限られます。例えば留学ビザや就労ビザなどの何らかの中長期在留資格ですでに日本に滞在している方です。観光など短期滞在で入国してきた外国人は、どの金融機関でも口座開設ができません。
したがって、海外に住所がある外国人が日本で会社をつくるために口座を開設するのであれば、日本で口座を使わしてくれる協力者が必要となります。一般的な事例として、その協力者にも会社の発起人・出資者になってもらい、その協力者の方の口座に資本金を振り込んで会社を設立します。設立後、経営・管理ビザの取得申請して無事に在留カードを取得できたら、必要に応じて協力者に発起人から外れていただくという流れになります。

資本金の額や振り込みのタイミングについて
原則、資本金の額は500万円以上
会社設立だけを考えるのであれば、資本金は1円でもOKです。しかしながら、外国人が会社を設立してビジネスを行うためには、設立後に経営・管理ビザ(正確には、在留資格「経営・管理」)の取得申請を行う必要があります。経営・管理ビザの取得要件として、基本的に資本金は500万円以上が求められます。
特に海外送金などで資本金の振り込む場合、振込手数料や為替手数料で差し引かれる分も考慮にいれてください。
資本金を振り込むタイミング
会社設立の流れを一度確認しましょう。まず、①口座を準備した後、②定款を作成して、③公証役場で認証して(株式会社の場合)、④個人口座に資本金を振り込み、⑤払込証明書をつけて登記申請、という流れです。
株式会社の場合
資本金を振り込むのは定款認証日以後です。定款認証前では、振り込まれたお金が個人のものか会社設立のための資本金なのか、明確に区別できないためです。特に、海外送金で振り込む場合、時差の関係もあったり送金が即時反映ではなく日数を要したりする場合があるので、スケジュール調整では十分な注意が必要です。
ややこしい話をすれば、もし定款認証前に振込がなされた場合でも、その振込が定款作成日または発起人全員の合意書作成日以降であれば、設立登記の申請は受理される取り扱いになっています。外国人の会社設立ではイレギュラーはできる限り避けるべきであり、このようないわゆる例外的規定をあてにしない方が無難です。
合同会社の場合
株式会社と異なり、合同会社では定款の認証が不要です。したがって、合同会社を設立するための資本金の振込は定款を作成した後になります。
口座にある500万円以上の残高があっても「振込」が必要
発起人の個人口座など、資本金の振込に使用予定の銀行口座に残高がある場合、その一部を資本金として使用することはもちろん可能です。ただし、資本金の振込では文字通り「振込」作業が必要であり、資本金としてお金を準備しましたという客観的事実を証明しなければなりません。
形式的で面倒を感じますが、あくまで資本金は定款認証後に振り込まれた額と日付が重要となります。資本金とするお金をいったん引き出して再度振り込みなおす必要があります。窓口で現金を引き出し、その場で再入金するという方法で構いません。資本金の振込だと伝えれば、窓口の担当者も問題なく対応してくれます。

資本金振込の具体的な手順
以上を踏まえて、会社を設立する場合の資本金振込手順を確認していきましょう。
① 発起人名義の口座を準備
発起人、すなわち資本金を支払う人の名義の銀行口座と通帳を準備します。新規で作る必要はなく、すでに持っている口座を使ってもかまいません。資金の振込先は個人名義の口座です。まだ会社設立前なのでそもそも法人名義で口座を開設できません。
会社資金はビジネス専用の銀行口座で運用することが一般的なため、発起人名義の口座に振り込んだ資本金を会社設立後に法人名義で開設した銀行口座に移す流れになります。
発起人が複数いる場合
複数の発起人で会社を設立する場合は、代表の発起人(発起人総代)を決めて、発起人総代名義の銀行口座を準備します。なお、一般的に総代となる人は設立後に代表取締役・代表社員になる人ですが、外国人が日本で会社を設立する場合の協力者などが担う場合もあります。
金融機関
「はじめに」で軽く触れましたが、資本金の振込が可能な金融機関は日本国内の銀行です。具体的には、一般的な都市銀行・地方銀行、ゆうちょ銀行、信用金庫、農協、各ネットバンクなどの国内金融機関、内閣総理大臣の認定を受けている外国銀行の日本国内支店です。
② 口座に資本金を振り込む
株式会社の場合は定款認証日以後、合同会社の場合は定款作成以降、発起人の口座に資本金を振込ます。複数人発起人(=出資者)がいる場合は、それぞれが発起人総代の口座に振込を行います。
③ 通帳のコピー
資本金の振込事実を明確にするために、通帳の中身をコピーします。コピーに必要な箇所は以下のとおりです。
- 表紙(銀行名)
- 氏名・口座番号の記載ページ
- 振込内容が記帳されているページ
ネットバンクやペーパーレス通帳
資本金の振込はネットバンクでも問題ありませんが、ネットバンクは通常通帳が発行されません。最近では、大手都市銀行や地方銀行でも通帳のペーパーレス化が進んでおり、むしろ紙の通帳がない方が主流となりつつあります。このような場合、マイページ等から閲覧可能な取引履歴をプリントアウトすることで通帳のコピーとして代用してかまいません。
以下の項目が含まれるようにプリントアウトしてください。
- 銀行名と支店名
- 口座名義人
- 資本金の振込事実が確認できる取引履歴
通帳コピーは早めに済ませる
法律が変わったのが2006年と最近なので勘違いしている人もまだ多いですが、口座に振り込まれた資本金は会社設立後すぐにビジネス活動資金として使用できます。資本金というのは、あくまで会社設立手続きまでにどれだけのお金を確保できたかを判断するためのもので、ビジネスを行う上で銀行残高が資本金を下回ってはいけないという決まりはありません。
会社設立後は、設備・備品購入や広告費の発生など、資金の動きが激しくなります。資本金として振り込まれた金額を正確に把握するためにも、通帳のコピーを早めにとっておくのが賢明です。
④ 払込証明書を作成
払込証明書とは会社の設立登記で必要となる書類で、発起人が資本金を支払った事実を代表取締役(あるいは代表社員)が証明するための書類を言います。払込証明書は下記の項目を含めて作成します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 払い込み金額の総額 | 定款に記載された資本金の額: 金〇〇〇円 |
| 払い込みがあった株数 | 定款の記載された金額を記載: 〇〇株 |
| 1株あたりの払込金額 | 「払込金額の総額÷払込株数」から算出した金額: 金〇〇〇円 |
| 払込年月日 | 資本金の払込みが完了した日付 |
| 本店所在地 | 設立事項で定めた所在地 |
| 会社名(商号) | 設立事項で定めた会社名(商号) |
| 代表取締役の氏名と捺印 | 捺印は代表者印(代表取締役の実印ではない) |
⑤ 証明書と通帳コピーをひとつにまとめる
以上の書類は会社の設立登記や経営・管理ビザの取得等で必要になってきますので、資本金振込資料一式として一つにまとめておきます。払込証明書を一番上に下記の順番でまとめておくと都合がよいです。
- 払込証明書
- 通帳の表紙のコピー
- 氏名や口座番号の記載ページのコピー
- 取引内容が記載された箇所のコピー
まとめ
日本で会社を設立する際の重要なステップである資本金の振込について簡単にまとめました。海外にいる外国人がこれらを一人で行うことは極めて難しく、やはり現実的ではありません。
ビザ申請では制度の概要把握や必要書類の正確な理解が必要です。ご不安やご不明な点がございましたら、お気軽に当事務所へご相談ください。入管申請手続きの専門家である当事務所が責任をもって手続き完了までサポートいたします。
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―記事を書いたのは私です―
行政書士あくろ事務所 代表
川戸 勇士
東大大学院博士課程修了/行政書士・薬剤師・博士(薬学)
薬・医療・国際化をキーワードとする許認可手続きを業務の柱として、すべての人が健康で豊かな暮らしを実現できる社会を目指しています。
レモンサワー・とり天・うなぎが大好物。
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