経営・管理ビザ 外国人の会社設立の基礎知識

外国人が日本で会社を設立するための前提知識

はじめに ~外国人が日本で会社を設立~

外国人や外国企業が日本へ進出する際には、一般的に下記の3つのタイプの事業形態を考えます。中でも、株式会社の設立はもっとも典型的な日本進出のパターンであり、イメージしやすい形態です。それぞれの事業形態ごとに相違点があります。下表にて簡単に確認します。駐在員事務所の業務は市場調査や連絡業務が主になるため、ビジネス活動を行うことができません。つまり、日本で収益をあげることができない(=課税されない)ので、法務局への登記も不要、税務署への届出も不要となります。

  1. 日本法人を設立する
    1. 株式会社を設立する
    2. 合同会社を設立する
  2. 日本支店を設立する
  3. 駐在員事務所を設置する
日本法人
株式会社>
日本法人
合同会社>
日本支店駐在員事務所
ビジネス活動できるできるできるできない
登記必要必要必要不要
事務所必要必要必要必要
資本金必要必要不要不要
会計処理の方法日本単独処理日本単独処理本店(本国)と合算
訴訟の範囲日本法人のみ日本法人のみ本店(本国)におよぶ
設立に必要な時間約1ヵ月約1ヵ月約1ヵ月
ビザ・在留資格の取得必要必要必要必要
(短期滞在ビザ)

会社設立とビジネス開始までの流れ

株式会社の設立を例として、実際に日本でビジネスをはじめるまでの大まかな流れを確認します。

ステップ① 株式会社の基本事項決定

会社名(商号)、会社住所、事業目的、発起人(株主)、発起人の出資額、役員構成など

ステップ② 定款作成

定款とは、会社を経営していくためのルールブックのようなものです。

ステップ③ 定款認証

定款認証とは、公証人が、その定款が正当な手続により作成されたことを証明することです。 株式会社は、主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立しますが、その登記を申請するために認証を受けた定款が必要です。

ステップ④ 資本金の振込

会社の資本金を振り込みます。日本の法律上、資本金は1円で株式会社を設立できますが、外国人の会社設立では「経営・管理」ビザの申請要件として資本金500万円以上が原則求められます。

ステップ⑤ 会社設立登記

会社登記とは、商号(社名)や本社所在地、代表者の氏名と住所、事業の目的など、取引上で重要な会社に関する事項を法務局に登録し、一般に開示できるようにすることです。 設立した会社の概要を一般に公表することにより、会社の信用維持を図るとともに、安心して取引できるようにすることが目的です。

ステップ⑥ 税務署への各種届出

「法人設立届」「給与支払い事務所等の開設届」「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」などを税務署に申請します。これら届出の控えは経営管理ビザ申請で添付する必要があります。

ステップ⑦ 許認可取得(必要に応じて)

ビジネスを行う上で各官公署から業許可を得る必要がある場合、ビザ申請の前に許認可取得を行います。

ステップ⑧ 経営・管理ビザの申請

ステップ⑦までをすべて終えた後、ようやく入国管理局へ経営・管理ビザ申請を行います。ビザが許可されると、晴れて日本でビジネスを行うことができます。

経営・管理ビザ 外国人の会社設立の基礎知識

① 日本法人を設立する(株式会社または合同会社)

日本法人を設立する場合、基本的には「株式会社」「合同会社」のどちらかのビジネス形態を選びます。
合同会社というと聞きなれないですが、株式会社との違いを下表で確認します。

株式会社合同会社
会社代表者と
出資者との関係
会社代表者則≠出資者でもOK出資者=会社代表者
出資者個人・法人可個人のみ
出資権の譲渡株式の譲渡自由他の社員の承諾が必要
設立に必要な費用
(法定費用実費額)
20万円程度~
(下記参照)
6万円程度~
(下記参照)

必要な就労ビザ・在留資格について

  • 会社代表者: 「経営・管理」
  • 会社代表者以外の外国人社員: 「技術・人文知識・国際業務」 「技能」 等

会社を設立する際の法定費用

株式会社や合同会社を設立するためには法に定めれられた実費の手数料がかかります(法定費用)。内訳として、定款にかかる費用登記にかかる費用の2つがあります。それぞれを見ていきます。

①定款にかかる費用

定款には「紙の定款」「電子定款」の2種類あります。「電子定款」とは、定款をPDF化し、代表者が作成した旨の証明(電子証明)を行った上で役所等に提出します。紙の定款と電子定款でそれぞれ法定費用が異なります。

さらに、株式会社の場合は、会社で作成した定款を公証人役場に提出しで認証を受けなければなりません。一方、合同会社は定款への認証が不要です。

②設立登記にかかる費用

株式会社の設立登記にかかる費用は登録免許税です。登録免許税は「資本金の金額×0.7%」です。株式会社の場合「資本金の金額×0.7%」が15万円に満たない場合は最低15万円です。

一方、合同会社も同様に登録免許税が必要で「資本金の金額×0.7%」です。合同会社は「資本金の金額×0.7%」が6万円に満たない場合は最低6万円です。

③設置にかかる法定費用総額のまとめ

会社設立に必要な実費額をまとめると下表のようになります。株式会社よりも合同会社の方が設立時のコストは低く抑えられますが、知名度は圧倒的に低く、株式譲渡にも制限があります。よく考えてどちらの形態で会社を設立するかを選択するようにしましょう。

株式会社
(紙の定款)
株式会社
(電子定款)
合同会社
(紙の定款)
合同会社
(電子定款)
印紙代40,000円なし40,000円なし
認証手数料50,000円50,000円なしなし
定款の謄本2,000円~2,000円~2,000円~2,000円~
登録免許税150,000円~150,000円~60,000円~60,000円~
法定費用合計242,000円~202,000円~102,000円~62,000円~

具体的な会社設立の流れは、下記にて解説しています。ご参照ください。

② 日本支店を設立する

日本支店は当然ながらビジネス活動可能で収益をあげることが可能です。ただし、支店はあくまで本店の一部であり法人としては扱われず、本国本店名義でビジネス活動を行います。会計処理は本国会社と合算処理されます。なお、訴訟は本国会社にも及びます。

少しややこしいですが、日本支店設立に際して資本金は不要ですが、設立登記は必要です。

必要な就労ビザ・在留資格について

  • 日本支店長: 「経営・管理」 「企業内転勤」
  • 支店長以外の外国人社員: 「技術・人文知識・国際業務」 「企業内転勤」 「技能」 等

駐在員事務所の設置

「はじめに」でもふれたように、駐在員事務所はビジネス活動によって収益を得ることが原則できません。

駐在員事務所で経営・管理ビザ(在留資格「経営・管理」)をはじめ、そもそもビザ・在留資格を取得することはほぼ不可能です。何かしら市場調査、連絡業務などを行うために外国人が駐在員として来日する際には、短期滞在ビザで入国することが一般的です。

まとめ

外国人が日本で会社を設立する、ビジネスをはじめるために必要な基礎知識について簡単にまとめました。これらは、日本でビジネスを行うための在留資格となる「経営・管理」ビザの申請の前段階の知識です。

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川戸勇士 静岡県磐田市の行政書士

―記事を書いたのは私です―

行政書士あくろ事務所 代表
川戸 勇士

東大大学院博士課程修了/行政書士・薬剤師・博士(薬学)
薬・医療・国際化をキーワードとする許認可手続きを業務の柱として、すべての人が健康で豊かな暮らしを実現できる社会を目指しています。
レモンサワー・とり天・うなぎが大好物。


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