はじめに ~合同会社設立の大まかな流れ~
外国人が日本で会社を設立する場合、株式会社を設立するか、合同会社を設立するかの2パターンです。正確には、合名会社、合資会社というパターンもありますが、ほとんど利用されることはありません。ここでは、外国人が日本国内に合同会社を設立する場合の大まかな流れについて、簡単に確認します。海外にいる外国人が会社を設立する場合と、すでに何らかの在留資格を所持して日本に住む外国人が会社を設立する場合とが想定されますが、流れは同じです。ただし、感覚的に当然ですが、海外居住の外国人が会社設立する方が手間がかかります。
そもそも合同会社とは?
株式会社は事業形態として代表的な法人格となります。外国人が会社をつくって経営管理ビザの申請を考える場合、ほとんどは株式会社を選びます。これに対して、合同会社は事業形態としては比較的新しく、2006年に創設された法人形態です。そのため、株式会社の方が知名度が圧倒的に高く、日本国内に約250万社の株式会社があるのに対して合同会社は約5万社しかありません。
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
知名度 | 高い | 低い |
代表者と出資者の関係 | 別々にできる | 原則同一 |
出資者の責任 | 間接有限責任 | 間接有限責任 |
代表者の名称 | 代表取締役 | 代表社員 |
役員の任期 | 最長10年 | なし |
決算の公告義務 | あり | なし |
利益配分 | 出資比率 | 自由 |
定款認証 | 必要 | 不要 |
設立費用 | 約20万円~ | 約6万円~ |
大まかな流れ
基本的には株式会社の設立と同様です
ステップ① 合同会社の基本事項決定
会社名(商号)、会社住所、事業目的、資本金の額、決算期など
ステップ② 定款作成
定款とは、会社を経営していくためのルールブックのようなものです。株式会社の場合は公証役場で作成した定款の認証が必要ですが、合同会社の場合は認証が不要です。
ステップ③ 資本金の振込
会社の資本金を振り込みます。日本の法律上、資本金は1円で合同会社を設立できますが、後に必要となる「経営・管理」ビザの申請要件として資本金500万円以上が原則求められます。
ステップ④ 会社設立登記
会社登記とは、商号(社名)や本社所在地、代表者の氏名と住所、事業の目的など、取引上で重要な会社に関する事項を法務局に登録し、一般に開示できるようにすることです。 設立した会社の概要を一般に公表することにより、会社の信用維持を図るとともに、安心して取引できるようにすることが目的です。
ステップ⑤ 税務署への各種届出
「法人設立届」「給与支払い事務所等の開設届」「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」などを税務署に申請します。これら届出の控えは経営管理ビザ申請で添付する必要があります。
ステップ⑥ 許認可取得(必要に応じて)
ビジネスを行う上で各官公署から業許可を得る必要がある場合、ビザ申請の前に許認可取得を行います。
ステップ⑦ 経営・管理ビザの申請
ステップ⑥までをすべて終えた後、ようやく入国管理局へ経営・管理ビザ申請を行います。ビザが許可されると、晴れて日本でビジネスを行うことができます。

会社設立に必要な書類と事務所の確保
海外に住んでいる外国人が日本で会社を設立の場合、注意しなければならいのは資本金の送金と印鑑証明書です。理由について、下記で説明します。
- 設立登記申請書
- 会社定款
- 本店所在地及び資本金決定書
- 代表社員の就任承諾書
- 資本金の払込証明書
- 代表社員の印鑑証明書
- 発起人の印鑑証明書
- 印鑑届出書
資本金の送金と日本の銀行口座
会社を設立するためには、資本金を発起人の銀行口座に入金するという手続きが必要です。発起人の銀行口座は日本の金融機関の口座である必要があります。
日本の銀行の口座を開設するためには、日本に住所を有している必要があります。したがって、基本的に海外に住んでいて日本に住所がない外国人は銀行口座を開設することができません。
つまり、海外に住んでいる外国人がスムーズに日本で会社を設立するのであれば、日本国内に住所がある協力者(日本人や永住者)を確保する必要があります。協力者の方に資本金をいくらか出資してもらい、協力者の銀行口座を使って会社を設立するという方法です。
印鑑証明書
印鑑証明書は居住地の市区町村役場で登録・発行するものですので、印鑑証明書を取得するためには日本に住所が必要となります。そのため、海外に住んでいる外国人は印鑑証明書を取得することができません。
これに関しては代替法が認められています。海外在住の外国人の本国に印鑑証明の制度がある場合(中国・韓国・台湾)は、本国の印鑑証明書(+翻訳文)でOKです。印鑑証明制度がない国の場合、サイン証明で代替します。
サイン証明制度
印鑑登録制度がない場合、本国でサイン証明を受けることができます。 本人が公証人の面前で必要書類に署名を行い、公証人が「本人の自署に相違ない」旨の証明をしてくれます。
作成した定款や就任承諾書などに海外在住の外国人の本国の印鑑証明(又はサイン証明)が必要となります。
海外に住んでいる外国人が会社設立をする場合、以下の手順となります。実際に作成した書類を海外へ郵送・返送する時間がかかります。
- 日本で会社設立に必要な書類を作成。
- サイン証明が必要な申請書類を海外に送付
- 公証人の面前で申請書類に署名しサイン認証
- サイン認証済みの申請書類を日本へ返送
事務所の確保
会社設立の手続き中、望ましくは事前に事務所(事業所住所)を確保する必要があります。
会社設立では会社住所を定めなければなりません。自宅住所を会社住所とすることもできますが、後々必要となる経営・管理ビザの取得申請では、自宅と会社の住所を別々にしなければなりません。したがって、できる限り事前に自宅と別の独立した事務所(事業所住所)を確保する方がスムーズです。
一方、海外に住んでいる外国人は、日本の印鑑証明や身分証明がありません。日本の不動産賃貸の慣習からは、海外に住む外国人が賃貸物件を確保することは極めて困難です。一部のレンタルオフィスなどではパスポートのみで契約してくれる場合もありますが、通常の不動産は基本的に契約できません。事務所の確保という点においても、上であげたように日本国内に住所がある協力者(日本人や永住者)を頼る必要があり、協力者に不動産契約等を行ってもらうのが無難です。
海外在住と日本在住での会社設立の違い
外国人が現在どこに住んでいるのかによらず、合同会社の設立の大まかな流れは同じです。結局のところ、海外に住んでいる外国人にとって問題なのは日本の身分証明や印鑑証明に必要となる日本の住所がないことが一番の問題となります。住所さえあれば、印鑑証明も取得できるし、在留カードなどパスポート以外の何かしらの日本の身分証明も取得でき、事務所賃貸契約も比較的スムーズに進みます。つまり、海外居住の外国人が日本で会社を1人で設立することは極めて困難であり、現実的ではありません。
したがって、海外に住んでいる外国人がこれから日本で会社を設立しようとする際は、日本国内に住所がある協力者(日本人や永住者で一時的に)をしっかりと確保する必要があります。協力者は、一時的に会社役員となって出資金の受け皿となったり、賃貸契約に奔走したりと会社設立に重要な役目を果たしますが、無事に会社が設立でき、外国人本人が経営管理ビザを取得して来日した際には、状況に応じて役員を降りることになります。

まとめ
外国人が日本で合同会社を設立するための大まかな流れについて簡単にまとめました。これらすべて完了してようやくビジネスを行うための在留資格となる「経営・管理」ビザの申請に進めます。海外にいる外国人の場合、スムーズに会社設立を進めるためには日本国内に住所がある協力者(日本人や永住者)を確保することがポイントです。
ビザ申請では制度の概要把握や必要書類の正確な理解が必要です。ご不安やご不明な点がございましたら、お気軽に当事務所へご相談ください。入管申請手続きの専門家である当事務所が責任をもって手続き完了までサポートいたします。
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―記事を書いたのは私です―
行政書士あくろ事務所 代表
川戸 勇士
東大大学院博士課程修了/行政書士・薬剤師・博士(薬学)
薬・医療・国際化をキーワードとする許認可手続きを業務の柱として、すべての人が健康で豊かな暮らしを実現できる社会を目指しています。
レモンサワー・とり天・うなぎが大好物。
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